コラム「会社を設立しよう!」では、会社を設立する上でのポイントをお話しします。
第1回目は個人事業と会社の違いです。

会社を設立するには登記が必要

起業しようと決めたら、まず2つの選択肢があります。
それは、「個人事業」として事業を行うのか、又は「会社」で事業を行うのかです。
会社で事業を行うと決めた場合、まず、会社を「登記」しなければなりません。

あなたは産まれた瞬間から存在しますが、会社は登記することによってこの世に存在することになります。
いわば、登記とは会社の「出生届」のようなものです。
登記をしないと、会社名義で預金口座を作成したり、店舗・事務所を借りるといった経済取引を行うことができません。

注意点としては、会社を「登記」をするには、費用がかかるというこです。
例えば、株式会社を設立する場合には、下図のような費用が発生します。

手続き 費用備考
定款の認証   ・認定手数料5万円     
・収入印紙4万円
電子認証の場合、収入印紙は不要。
設立登記・登録免許税15万円資本金の0.7%の額で、その額が15万円に満たない場合は15万円
※司法書士などの専門家に依頼すると、別途手数料が発生するのが一般的
  • 「定款」とは、会社の決まり事を定めたルールブックのようなもの
  • 「認証」とは、定款が正当な手続きによって作成されたことを公証役場で認めてもらうこと

会社の種類

会社法上、会社は次の4つに分類されます。

  • 株式会社
  • 合同会社
  • 合名会社
  • 合資会社

事業を始める場合には、株式会社又は合同会社のどちらかを選択することが多いです。
株式会社と合同会社の違いについては、コラム「会社を設立しよう! ②株式会社と合同会社の違い」でお話しします。

税率の違い

事業によって得られた利益に税金が課税されます。
国税と地方税についてポイントを見ていきます。

国税

国税の場合だと、個人事業の場合「所得税・復興特別所得税」、会社の場合「法人税・地方法人税」などが課されますが、それぞれ税率が異なります。

所得税

所得税は、課税される所得金額に応じて税率が段階的に上がっていく、累進税率がとられています。

例えば、課税される所得金額が1,000万円の場合、
1,000万円×33%ー427,500円=1,764,000円の所得税が課されます(復興特別所得税を除く。)。

課税される所得金額税率控除額     
195万円未満5%0円
330万円未満10%97,500円
695万円未満20%427,500円
900万円未満23%636,000円
1,800万円未満33%1,536,000円
4,000万円未満40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円
所得税の速算表

法人税

法人税は、課税される所得金額800万円を境にして、一定税率がとられています(資本金1億円以下の普通法人の場合)。

例えば、課税される所得金額が1,000万円の場合、
800万円×15%+(1,000万円ー800万円)×23.20=1,664,000円の法人税が課されます(地方法人税を除く。)。

課税される所得金額税率
800万円以下の部分15%
800万円超の部分23.20%
法人税の税率(資本金1億円以下の普通法人)

地方税

個人事業の場合も、会社の場合も、利益に対して税金が課されます。
しかし、会社の場合は、黒字でも赤字の場合であっても「均等割」という税金が発生します。
利益の有無に関係なく、会社が存在するだけで税金が発生してしまうということですね。

例えば、福岡市で資本金300万円の会社を設立した場合、1期目の利益が赤字であっても、福岡市の均等割50,000円と福岡県の均等割21,000円が課税されます(1期目が12ヶ月の場合)。

福岡市の均等割は下記のようになっています。


福岡県の均等割は下記のようになっています。

資本金等の額が1,000万円以下法人(一定の法人を除く)    年額21,000円   

信用力に差がある?


会社の方が、個人事業に比べ「社会的信用」があると言われていますよね。

例えば、個人名が記載されている商品と、会社名が記載されている商品、どちらが手に取りやすいですか?
おそらく、会社名が記載されている商品の方が、なんとなく「安心感」があるのではないでしょうか?
もちろん、個人名でも、安心感を感じる場合もあると思いますが、このような「一般的な感覚」ではなく、なぜ会社に信用力があるのか…、私は、個人事業と法人の信用力の違いは、「決算書」の違いからくると考えています。

法人は、利害関係者(株主、経営者、従業員、お客、取引先、銀行、地域社会)が広範囲にわたり、取引金額も大きくなります。
そのため、法人の決算書は、個人事業に比べ情報量が多く、内容も細かいところまで記載されています。
また、会社の利害関係者は決算書をみて意思決定を行うため、個人事業の決算書に比べ正確性が求められているのです。

個人事業  青色申告決算書(白色の場合は、収支内訳書)
 会社貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表。申告時には、勘定科目内訳明細書も添付。
個人事業と会社の申告書・決算書

個人事業と会社どっちがいい?

例えば、許認可の関係上会社でないといけない、取引先が会社での取引を要求している、複数人で経営する、などの理由がなければ、個人事業からスタートした方が無難であると思います。

先に述べたように、会社を設立するには費用がかかり、赤字でも均等割が発生します。また、会社をたたむようなことになった場合も、会社を清算する費用が発生します。